日本の瓦の歴史を簡単にご紹介します。
日本に瓦文化が伝来したのは一説では587年に、法興寺造営のために百済から瓦の技術者集団を派遣された時点のようです。ただ、先行して九州に伝来していた可能性も指摘されています。
大陸から伝来した瓦文化は日本独自の進化を遂げていきます。代表例として「軒平瓦」という大陸では見られない瓦が発見されています。
このことからも日本は古来より外から入ってきたものを受け入れ独自に昇華させることが一つの文化なのかもしれません。
その後、寺院で使用されていた瓦はそれ以外の建物へ波及していきます。藤原京の宮殿である藤原宮や平安時代の貴族邸宅等が瓦ぶきの建物となり、続日本記の太政官奏では都の景観を壮麗にするため庶民にも瓦ぶきを奨励していたようです。
安土桃山時代以降には大名の権威付けに瓦ぶきが用いられ、金箔瓦・鯱などが現在イメージされるような瓦の造形が完成されていきます。近世に入り徳川幕府により、瓦ぶきは権威の象徴として使用が制限されていきますが、防火の観点から土蔵には瓦の使用が認められていたようです。
その後、町家にも防火対策用瓦の使用が奨励されていくようになります。町家に普及していったのは18世紀半ごろに桟瓦という簡略的な瓦が発明されたことが大きな要因とされています。
現在の住宅に使用されているのは江戸時代に発明された桟瓦が少しづつ発展した瓦となっています。
このように日本に瓦の技術文化が伝来して以降、瓦には時代によって「仏教寺院の様式」「都の壮麗な景観」「大名の権威」「防火対策」などの意味役割が与えられてきました。現在においても「家屋の温度調節」「人を雨風から守る」「建物としての個性」といった役割が瓦にはあります。
そして2015年以降、世界でSDGsが提唱されている中、今も建物を暑さや寒さ、風雨から守り日本建築の文化と景観を伝え続ける1400年前の瓦が現役で屋根の上で活躍しています。大自然の恵みである「土」から生まれた「瓦」は最高の自然素材であり、最強の自然建材と言えます。この自然建材を施工する技術を守り発展させていくために日々私たちは技術の研鑽に努めています。
出典:一般社団法人全日本瓦工事業連盟「一般社団法人全日本瓦工事業連盟はSDGs宣言の達成に貢献することを宣言します」
:大橋泰夫『古代の瓦 奈良・平安期』
:森郁夫『一瓦一説-瓦からみる日本古代史-』淡交社、2014年。
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