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株式会社 馬場瓦店

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知っているようで知らない「屋根の勾配」のはなし

知っているようで知らない「屋根の勾配」のはなし|株式会社馬場瓦店
瓦屋のブログ

知っているようで知らない
「屋根の勾配」のはなし

寸・角度・地域差・雨仕舞・費用まで。屋根の専門店が、屋根の傾き「勾配」について一からじっくり解説します。

株式会社馬場瓦店KAWARA ROOFING SPECIALIST

「うちの屋根は急勾配だから瓦が映える」「実家は雪国だから緩い屋根だった」——なんとなく口にすることはあっても、「勾配」そのものをきちんと説明できる方は意外と少ないのではないでしょうか。

実は屋根勾配は、見た目の印象だけでなく、雨漏りのしやすさ・屋根裏の使い勝手・使える屋根材・工事の費用まで、住まいのあらゆる面に関わる重要な要素です。今回は屋根の専門店として、この「勾配」について一からじっくり解説していきます。

其の一

そもそも勾配とは?

屋根をイメージすると、多くの方は頂点を持つ三角形を思い浮かべると思います。この、頂点から地面に向かって下がっていく屋根面の傾き具合を「勾配」と呼びます。

日本の建築業界では、この傾きを角度(〇度)ではなく「寸」という単位で表すのが一般的です。水平方向の長さを10としたときに、垂直方向にどれだけ立ち上がっているかを表したもので、「4寸勾配」「6寸勾配」のように表現します。寸の数字が大きくなるほど傾斜は急になり、10寸でちょうど45度になります。

目安として、勾配は次の3つのグループに分けて呼ばれることが多いです。

呼び方寸表記の目安角度の目安
緩勾配(かんこうばい)3寸以下約16.7度以下
並勾配(なみこうばい)3寸〜5寸程度約16.7度〜26.6度
急勾配6寸以上約31度以上

ちなみに勾配が急になるほど、屋根の実面積は水平投影面積よりも大きくなります。つまり同じ建坪でも、急勾配にするほど必要な屋根材の量が増えるということです。この点は後ほどコスト比較のところでも触れます。

参考資料

  • イーグル建創「3寸?4寸?5寸?屋根勾配ってなんのこと」eaglekenso.com
  • マルコーホーム「3寸・4寸 屋根勾配って何のこと?」maruko-home.co.jp
  • AFGC「屋根の基礎知識(屋根勾配)」afgc.co.jp
  • 作造「屋根の角度『屋根勾配』の決め方」sakuzo-style.jp
  • 街の屋根やさん横浜「屋根の勾配(角度)と屋根材の関係」yaneyasan14.net
其の二

急勾配の建物が多い地域の特徴

急勾配の屋根が多く見られるのは、代表的なところでは豪雪地帯です。雪をできるだけ屋根に積もらせず、自重で滑り落としてしまう「落雪式」の設計思想によるもので、6寸(約31度)を超えると雪が自然に滑り落ちやすくなるといわれています。

その極致ともいえるのが、世界遺産にもなっている白川郷・五箇山の合掌造りです。あの茅葺きの急勾配屋根は約60度にも達し、豪雪地帯で暮らすための建築の知恵が詰め込まれています。東北地方で見られる「兜造り」も、四方に傾斜をつけて風雪をしのぎながら、屋根裏の採光や換気を確保する伝統的な工夫の一つです。

もちろん現代の住宅ではすべてがここまで急ではありませんが、落雪スペースを確保できる敷地条件が整っている地域では、今も急勾配の屋根が選ばれる傾向にあります。

参考資料

  • note「日本建築第9回|雪国建築の落雪と屋根勾配の合理」note.com
  • kinoiba「雪国の構造設計|積雪荷重・屋根勾配・基礎深度を徹底解説」kinoiba.jp
  • ぬりマッチ「雪国の屋根には独自の工夫が!」gaiheki.lvnmatch.jp
其の三

緩い勾配の建物が多い地域の特徴

一方、緩勾配の屋根が多いのは、大きく分けて2つのタイプの地域です。

一つは、台風や強風の影響を強く受ける地域です。傾斜を抑えることで風の抵抗を減らし、屋根が煽られて飛散するリスクを下げることができます。沖縄など台風の通り道にあたる地域で、伝統的に低い勾配の屋根が用いられてきた背景には、こうした耐風性への配慮があります。

もう一つは、同じ豪雪地帯でも「雪を落とさず、屋根の上に留めておく」という発想を採る地域です。北海道などで普及している無落雪屋根がその代表で、緩い勾配やほぼ平らな形状にし、雪止めやスノーダクトで計画的に処理します。落雪による事故や隣家とのトラブルを避けられる一方、屋根の上に雪の重みがかかり続けるため、建物の構造をしっかりと強化しておく必要があります。

このように、同じ「雪国」でも「落とす」か「溜める」かという方針の違いによって、真逆の勾配が選ばれることがあるのは興味深いポイントです。

参考資料

  • コスモ建設「豪雪地帯の屋根の特徴は?」cosmokensetsu.co.jp
  • kinoiba「雪に強い屋根の形はどれ?」kinoiba.jp
  • アットホームラボ「雪国・豪雪地帯における屋根選びのポイントとは?」athomelabo.jp
  • ace「雪国ならでは!豪雪に耐える屋根の雪対策をご紹介」ace-g.com
其の四 / 比較①

勾配の違いによる比較① 雨仕舞に関して

勾配は、雨水の流れやすさ、すなわち「雨仕舞(あまじまい)」に直結します。

急勾配の屋根は雨水が素早く流れ落ちるため、屋根材の重なり部分に水が溜まりにくく、雨漏りのリスクを抑えやすいのが特徴です。汚れも雨とともに流されやすいため、美観を保ちやすい面もあります。

一方、緩勾配の屋根は水はけが悪くなりやすく、屋根材の隙間から水が浸入するリスクが高まります。そのため屋根材ごとに「最低勾配」が定められており、これを下回ると雨漏りの可能性が大きく高まります。

代表的な最低勾配の目安は次の通りです。

  • 金属屋根(縦葺き):1寸以上
  • 金属屋根(横葺き)・スレート屋根:3寸以上
  • アスファルトシングル:3.5寸以上
  • 陶器瓦:4寸以上

つまり、私たち瓦屋根を扱う立場から言えば、瓦を美しく長持ちさせるには最低でも4寸以上の勾配が必要ということになります。緩勾配の建物に瓦を葺きたい場合は、下地の防水施工をより厳重にするなどの対策が欠かせません。

参考資料

  • アメピタ「屋根勾配(角度)と雨漏りの関係?」amepita.jp
  • 街の屋根やさん横浜「屋根の勾配(角度)と屋根材の関係」yaneyasan14.net
  • フリーダムな暮らし「屋根を長持ちさせるなら勾配選びも重要!」freedom.co.jp
其の五 / 比較②

勾配の違いによる比較② 屋根裏空間の活用

勾配は、屋根裏(小屋裏)の広さにも大きく影響します。

急勾配の屋根は棟(むね)の高さが確保しやすいため、屋根裏に立って歩けるほどの高さが生まれることも珍しくありません。ロフトや屋根裏収納として活用すれば、延床面積を増やさずに収納力を高められるというメリットがあります(天井高などの条件を満たせば、床面積に算入されず固定資産税の面で有利になるケースもあります)。

一方、緩勾配の屋根は棟の高さを抑えられる分、屋根裏空間は狭くなりがちです。その代わり建物全体の高さを抑えられるため、周囲の景観に馴染ませやすい、圧迫感の少ない外観にしやすいという良さがあります。

「収納力を重視するか」「すっきりとした外観を重視するか」は、勾配選びの分かれ道の一つといえるでしょう。

参考資料

  • 作造「屋根の角度『屋根勾配』の決め方」sakuzo-style.jp
  • 東宝ホーム「屋根勾配はどう決める?角度によって何が変わるの?」tohohome.jp
  • フリーダムな暮らし「屋根を長持ちさせるなら勾配選びも重要!」freedom.co.jp
其の六 / 比較③

勾配の違いによる比較③ 施工にかかる期間・費用

勾配が急になるほど、水平投影面積に対する実際の屋根面積が大きくなります。屋根が大きくなるということは、それだけ屋根材や下地材の使用量が増え、材料費もかさむということです。

さらに、急勾配の屋根は作業員が安全に作業するための足場や命綱の設置が欠かせず、その分の仮設費用や施工日数が緩勾配の屋根に比べて増える傾向があります。高所での作業になるほど、職人の技術と時間が必要になるためです。

反対に緩勾配の屋根は、屋根面積が抑えられ、条件によっては足場の規模を小さくできる場合もあり、コストパフォーマンスに優れる傾向があります。ただし前述の通り、雨仕舞の面では入念な防水対策が必要になるため、「初期費用が安い=トータルで一番お得」とは一概に言えない点には注意が必要です。

一般的に、屋根全体のリフォーム費用は建物の規模や屋根形状によって大きく変わりますので、勾配だけでなく屋根の形状・面積・使用する屋根材を含めた総合的な見積もりで比較することをおすすめします。

参考資料

  • 西宮の屋根やさん「屋根勾配のおすすめの選び方と角度早見表」szk-biso.jp
  • フリーダムな暮らし「屋根を長持ちさせるなら勾配選びも重要!」freedom.co.jp
其の七 / 番外編

太陽光パネルとの相性も要チェック

近年、屋根のリフォームや新築と合わせて太陽光パネルの設置を検討される方も増えています。日本国内における太陽光パネルの発電効率が高いとされる設置角度は、おおむね20〜30度程度で、これは3寸〜5寸勾配(約16.7度〜26.6度)にあたります。

急勾配すぎても緩勾配すぎても発電効率という点では最適とは言えないため、将来的に太陽光パネルの設置を考えている方は、勾配を検討する段階から一緒に相談しておくと安心です。

参考資料

  • 東宝ホーム「屋根勾配はどう決める?角度によって何が変わるの?」tohohome.jp
其の八

勾配ごとのおすすめ屋根材表

最後に、勾配の目安ごとに検討しやすい屋根材をまとめました。あくまで一般的な目安ですので、実際の施工可否は建物の構造や地域の気象条件によって異なります。

勾配区分寸表記の目安角度の目安検討しやすい屋根材ポイント
極緩勾配1寸未満〜約5.7度防水シート・アスファルト防水(陸屋根)ほぼ平ら。防水層の施工品質が命綱
緩勾配1寸〜3寸約5.7度〜16.7度金属屋根(縦葺き)横葺きやスレートは水はけ不足に注意
並勾配(緩め)3寸〜3.5寸約16.7度〜19.3度スレート屋根、金属屋根(横葺き)新築で最も多い勾配帯の一つ
並勾配3.5寸〜4寸約19.3度〜21.8度アスファルトシングル、金属屋根瓦はこの帯から検討対象に入り始める
並勾配(瓦対応)4寸〜5寸約21.8度〜26.6度陶器瓦、スレート、金属屋根ほぼすべての屋根材が選択可能。太陽光にも好相性
急勾配6寸以上約31度以上陶器瓦、金属屋根雨仕舞・美観に優れるが施工費は増加傾向

瓦屋根をご検討の場合、最低でも4寸勾配以上が目安になります。既存の屋根が緩勾配で瓦への葺き替えをお考えの場合は、下地からの補強や勾配自体の見直しが必要になることもありますので、現地調査のうえでご提案させていただきます。

参考資料

  • ナタリールーフ「屋根の勾配とは|失敗しないための基礎知識」arise1.jp
  • アメピタ「屋根勾配(角度)と雨漏りの関係?」amepita.jp
  • フリーダムな暮らし「屋根を長持ちさせるなら勾配選びも重要!」freedom.co.jp

まとめ

屋根の勾配は、単なる見た目のデザイン要素ではありません。

  • 雨漏りのしにくさ(雨仕舞)
  • 屋根裏空間の使いやすさ
  • 施工期間・費用
  • 選べる屋根材の幅
  • 太陽光パネルとの相性

など、住まいの快適性や資産価値に長く関わってくる大切な要素です。地域の気候風土によって「急勾配が向いている地域」「緩勾配が向いている地域」がはっきり分かれるのも、屋根が長い年月をかけて土地の気候と対話してきた証といえるでしょう。

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